2018年6月8日金曜日

迦具夜比賣=かぐや姫? 〔219〕

迦具夜比賣=かぐや姫?


些か戯れたタイトルとしてしまったが、これがなかなか読み解けなかったのも事実…かつては「迦具夜比賣」=「夜毎良き相手に巡り合うヒメ」なんて、もっとふざけた解釈もしたように記憶する。が、今回は真面目に、ちゃんと紐解いてみよう。

出自を述べてみると…若倭根子日子大毘毘命(開化天皇)が旦波之大縣主の由碁理の比賣である竹野比賣を娶って誕生したのが比古由牟須美命であった。その命に二人の王子がおり、兄の方が大筒木垂根王と呼ばれたと記載されている。付記するようにこの二王には五人の比賣がいたとされる。そのうちの一人が「迦具夜比賣」である。

大筒木垂根王には「山代」が付かないが、古事記の開化天皇紀では直後に「山代之大筒木眞若王」が登場することから、間違いなく「大筒木」は山代国にあったと思われる。更にこの眞若王は、比古由牟須美命とは異母兄弟である日子坐王が日子国の袁祁都比賣命(叔母に当たる)を娶って誕生している。

五人の比賣と付記された意味は男子のいない大筒木垂根王に日子国(丸邇の祖の一族)から養子のように移ったことを告げているのであろう。父親の日子坐王と同じようにこの眞若王は旦波、とりわけ「息長」一族との繋がりを深めて行くのである。いずれにしろ大筒木垂根王は山代の、想像を越える急傾斜の山麓を豊かな土地にし、天皇家への貢献は大いなるものであったのだろう。


大筒木垂根王


<山代之大筒木>
既に述べたように「筒木」を用いてその急斜面に「池(沼)」を作った石垣作りに長けた王と紐解いた。

詳細はこちらを参照願うが、「垂根」=「浮水(葉)植物(蓴菜など)」貴重な食用植物の栽培に功があったと推察される。

「筒木」と「垂根」の文字を使って、重要な…城作りも?…石垣作りの技術が開発されていたことを伝えているのである。

これほど重要な人物であるが、正史日本書紀には登場しない。日本の歴史は「根無し」草と断じる・・・と、横道に逸れそうなので、これくらいにして…。

さて、本題の「迦具夜比賣」とは如何に読み解けるのであろうか?…いつものように一文字一文字を紐解いてみよう。


迦具夜比賣命

筒木垂根王の娘「迦具夜比賣(カグヤヒメ)」、竹から生まれたかぐや姫、かぐや姫(竹取)物語の由来だとか、それはそれとして後世に作られた物語(作者不詳)として受け止めておこう。そもそも古事記の解釈が全く不完全な状況の中で様々な人々が自分なりの解釈で物語を作る、取り敢えず、古事記にインスパイアされた、で宜しいかと…◯◯物語・・・。

初見の頃には未熟であった安萬侶コードも今はかなりの数になって来た。「迦具夜」の三つの文字は既に幾度か遭遇し、それを適用してみようかと思う。「迦」=「辶+加」(合せる、施す、増やす)、「具」=「貝(谷間の田)+手」(手を加えた谷間の田)、「夜(ヤ)」=「谷(ヤ)」となる。


迦具夜=谷間に手を加えて田を増やす

<迦具夜比賣・袁邪辨王>
…比賣と紐解ける。山代之大筒木の谷間を探すことになる。御所ヶ岳山塊の南麓は急峻である。川となる前に流れてしまうところと推察される。

この山塊の北麓に造られた「茨田」は谷川を活用したのだが、南麓では貯水する池作りから始めなければならかったと思われる。

現在の地形との相違はあるだろうが、図に示したような谷間…実に数少ないが…の棚田が見受けられる。

現在の犀川木山の中心地、その裏山の谷間である。犀川(今川)沿いに広々とした水田が作られているが、そこを治水するのは後の時代に譲らねばならなかったかと思われる。

山麓であってもかなりの傾斜地での水田作りであったと推測される。興味深いのは山麓を斜めに走る谷間であり、傾斜が緩和された特徴的な地形を示している。御子が袁邪辨王とある。


袁(ゆったり)|邪(曲がる)|辨(山腹)

…「ゆったりと曲がっている枝稜線が作る山腹」と解釈できる。「辨」=「花弁」(花弁のような地形)から「山腹」を表すと紐解いた。既出の「大斗乃辨神」などの解釈に類似する。図に示したように大きく曲がりながら麓に届く地形である。御子の名前も併せて当地の特徴を伝えていると思われる。

この地に作られた池の数は半端ではないことを示していると思われる。今も多くの池(沼)が見られる、豊かな湧水で枯れることの少ないところであろう。この地は丹波国、多遅摩国、稲羽国に近い。早くから渡来の人々が住んだところと思われる。応神紀になるが天之日矛という新羅の王子の説話があり、多遅摩国で住んだとか…。それにしても急勾配の山麓、この開拓の歴史こそが「虚空見日本国」の歴史であろう。

皇統に関係することを売りに古事記の解釈本を多数出版し、TVにも顔を出している方がおられるが、古事記は事実ではないが真実とのこと。何だか意味不明な表現であるが、登場人物の名前をおざなりにしては古事記を解釈するわけにはいかない。古事記を分かりやすく・・・入門書を書くことほど難しいことはないのである・・・おっと、この方にも「竹」の文字が・・・。